R3i 編集記事

残存心血管リスク:アポリポ蛋白Bは優先されるマーカーか?
Prof. Jean Charles Fruchart, Prof. Michel Hermans, Prof. Pierre Amarenco
編集デスクから

脂質異常症に関するガイドラインでは、心血管リスクの低減を目指した介入の主要な脂質ターゲットとして、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)に注目している。しかし、患者がLDL-Cの目標値、あるいはそれよりも低い数値を達成している場合でも、残存心血管リスクが存在する 1,2 。残存心血管リスクは様々な要素からなるが、リポ蛋白関連のリスクが主要な要素である可能性がある 3 。問題は、残存心血管リスクを評価し、治療的介入の指針とするには、どの脂質バイオマーカーが最も適切かということである。

ガイドラインでは、LDL-Cのほかに、非高比重リポ蛋白コレステロール(non-HDL-C)とアポリポ蛋白(apo)Bを重要な副次的ターゲットとするよう提言している(4。これらのパラメータは、LDL-Cの目標値を達成している場合でも高値を維持する場合がある。たとえば、National Health and Nutrition Examination Survey and Very Large Database of Lipids研究のデータを用いたある解析では、LDL-Cの目標値(<70 mg/dL)を達成している高リスク患者の7例に1例がnon-HDL-C高値、12例に1例がapoB高値であった(5)。このため、non-HDL-CとapoBの両者が、残存心血管リスクを評価するための潜在的マーカーとして提案されている。しかし、2019年の欧州心臓病学会/欧州動脈硬化学会の脂質異常症に関するガイドラインでは、apoBが心血管リスクの指標としてLDL-CやHDL-Cよりも正確であり、脂質の低下が適切であるかを判断するための優れた指針となると結論している 4 

実際、この提案を支持する確実な科学的根拠が存在する。apoBは、LDL、トリグリセリド(TG)-richリポ蛋白とそのレムナントなどのアテローム形成性リポ蛋白の主要な構成成分である。apoB含有リポ蛋白の各粒子にはapoB分子が1つしか存在しないため、apoBの測定値がアテローム形成性apoB含有リポ蛋白粒子の総数の指標となる。したがってapoBは、従来の脂質マーカーである総コレステロール、トリグリセリド、LDL-C、non-HDL-Cを統合して一つの指標としたものである。疫学研究およびメンデルランダム化解析により、apoBはLDL-Cやnon-HDL-Cよりも、アテローム形成性apoB含有リポ蛋白に関連する心血管リスクの優れた予測因子であることが示されている 6-9 。これらの所見から、apoBがアテローム性動脈硬化症の主な誘因であり、すべてのapoB含有リポ蛋白の濃度の低下を、リポ蛋白関連のリスクの低減を目指した治療戦略の中心とする必要があることが示唆される。

apoBは、残存心血管リスクのマーカーとして有用であるだけでなく、治療的介入の指針にもなりうる。ODYSSEY OUTCOMES試験の最近の解析では、両方の特性が明らかにされた(10 。ODYSSEY OUTCOMES試験では、急性冠症候群を最近発症し、高強度のスタチン治療にもかかわらずアテローム形成性リポ蛋白が高値[LDL-C≧70 mg/dL(1.81 mmol/L)、non-HDL-C≧100 mg/dL(2.59 mmol/L)またはapoB≧80 mg/dL]の患者をアリロクマブまたはプラセボに無作為に割り付けた。主要心血管イベント(MACE)のリスクがベースラインのapoB濃度の上昇に伴って増大しただけでなく(ベースラインのapoB値が10 mg/dL上昇するごとに11%増大)、4ヵ月時の治療中のapoB値が低い患者ほど、MACEの減少が相対的にも絶対的にも大きかった。このapoB達成値と絶対的な臨床的ベネフィットとの関係は、LDL-C値やnon-HDL-C値よりも良好であった 10 。

以上を総合すると、蓄積したエビデンスにより、apoBがリポ蛋白関連の残存リスクの評価において重要であることが確認された。臨床医にとっては、この知見を日常診療にどのように取り入れるのが最善であるかが問題である。現在ではapoBの測定は容易に利用でき、安価で、妥当性が十分に検証されており、空腹時の採血を必要とせず、脂質検査項目に日常的に組み入れることができる(11)。apoBの測定が臨床の場で日常的に行われるためには、このエビデンスを認識しこれに対応したガイドラインが必要であることは明らかである。

参考文献

  1. Sabatine MS, Giugliano RP, Keech AC, et al. Evolocumab and clinical outcomes in patients with cardiovascular disease. N Engl J Med 2017; 376:1713–22.
    2. Schwartz GG, Steg PG, Szarek M, et al. Alirocumab and cardiovascular outcomes after acute coronary syndrome. N Engl J Med 2018 379:2097–107.
    3. Honda S, Puri R, Anderson T, Kastelein JJP, et al. Determinants of plaque progression despite very low Low-density lipoprotein-cholesterol levels with the PCSK9 inhibitor, evolocumab. JACC Cardiovasc Imaging 2021;doi: 10.1016/j.jcmg.2021.11.014.
    4. Mach F, Baigent C, Catapano AL, et al. 2019 ESC/EAS guidelines for the management of dyslipidaemias: lipid modification to reduce cardiovascular risk. Eur Heart J 2020;41:111-88.
    5. Sathiyakumar V, Park J, Quispe R, et al. Impact of novel low-density lipoprotein-cholesterol assessment on the utility of secondary non-high-density lipoprotein-C and apolipoprotein B targets in selected worldwide dyslipidemia guidelines. Circulation 2018;138:244-54.
    6. Sniderman AD, Thanassoulis G, Glavinovic T, et al. Apolipoprotein B particles and cardiovascular disease: a narrative review. JAMA Cardiol 2019;4:1287-95.
    7. Johannesen CDL, Mortensen MB, Langsted A, Nordestgaard BG. Apolipoprotein B and non-HDL cholesterol better reflect residual risk than LDL cholesterol in statin-treated patients. J Am Coll Cardiol 2021;77:1439-50.
    8. Marston NA, Giugliano RP, Melloni GEM, et al. Association of Apolipoprotein B-containing lipoproteins and risk of myocardial infarction in individuals with and without atherosclerosis: distinguishing between particle concentration, type, and content. JAMA Cardiol 2022;7:250-6.
    9. Ference BA, Kastelein JJP, Ray KK, et al. Association of triglyceride-lowering LPL variants and LDL-C-lowering LDLR variants with risk of coronary heart disease. JAMA 2019;321:364-73.
    10. Hagström E, Steg PG, Szarek M, et al. Apolipoprotein B, residual cardiovascular risk after acute coronary syndrome, and effects of alirocumab. Circulation 2022 Jun 30:101161CIRCULATIONAHA121057807. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057807.
    11. Langlois MR, Nordestgaard BG, Langsted A, et al. Quantifying atherogenic lipoproteins for lipid-lowering strategies: consensus-based recommendations from EAS and EFLM. Clin Chem Lab Med 2020;58:496-517.