R3i社説
慢性腎臓病における残存血管リスク:新たな選択肢の登場
Prof. Jean Charles Fruchart, Prof. Michel Hermans, Prof. Pierre Amarenco
編集デスクから
慢性腎臓病(CKD)は世界的な健康問題としてますます認識されている。非伝染性疾患による死亡率および障害調整生命年は概ね減少しているが、CKDではこのような好ましい傾向はみられない(1)。肥満および糖尿病のさらなる蔓延と高齢化により、世界で約11~15%の人がCKDに罹患している(2,3)。2型糖尿病はCKDの主なリスク因子であるが、非糖尿病患者にもリスクがある。このため、CKDは、緊急の対策が必要とされている臨床上の重要なアンメットニーズとなっている。
腎アウトカムと心血管アウトカムの両方に対して良好な効果を示す新規の血糖降下薬について、明るいニュースが飛び込んできた。ナトリウム・グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害薬のカナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジンは、主要心血管イベントおよび心不全による入院を減少させるというベネフィット(プラセボに対する優越性または非劣性)を示したことから(4-6)、2型糖尿病患者の管理に関するガイドラインの推奨事項を更新することが支持された。これに加え、主要なアウトカム試験で腎へのベネフィットを示すエビデンスも得られている。2型糖尿病患者を対象としたCREDENCE(Canagliflozin and Renal Events in Diabetes and Established Nephropathy Clinical Evaluation)試験は、カナグリフロジンにより複合主要評価項目[末期腎不全(ESKD)、血清クレアチニン値の倍化、腎臓または心血管を原因とする死亡]が30%減少し、さらに腎臓病に関連する複合主要評価項目(心血管を原因とする死亡を除く上記の定義)が34%減少したことから、有効性が認められたため早期中止となった(7)。
SGLT-2阻害薬を用いたその後の2つの大規模試験には、非糖尿病患者も登録された。このうち1つ目の試験である患者2,152例を対象としたDAPA-CKDは、2型糖尿病の有無にかかわらず、複合主要評価項目[推算糸球体濾過量(eGFR)の50%以上の持続的な低下、ESKD、腎臓または心血管を原因とする死亡]が42%減少し、有効性が認められたため早期中止となった(8)。ごく最近実施されたEMPA-KIDNEYは、平均eGFRが低値の2型糖尿病患者および非2型糖尿病患者を登録しているという点でCREDENCEおよびDAPA-CKDと異なるが、有効性が認められたため早期中止となった(9)。詳細な報告が待たれるものの、この3つのすべての試験の結果は、糖尿病の有無にかかわらず、リスクの高い患者における残存血管リスク(CKDの進行を含む)の管理において臨床的に重要な意味をもつ。
これらの新しい血糖降下薬のほかに、脂質調節薬にも可能性がある。CKDでは、脂質代謝調節異常により、血漿中高比重リポ蛋白コレステロール濃度の低下とトリグリセリド上昇がみられ、低比重リポ蛋白コレステロール値は通常正常であることを特徴とする、脂質異常症をきたす(10)。この脂質異常症は、腎臓への脂質沈着による腎機能低下の進行と関連している(10,11)。スタチンとエゼチミブの併用は、脂質異常症を有するCKD患者において心血管系へのベネフィットを示すが、高い残存リスクは持続する(12)。新しい選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体αモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートの臨床試験の結果は有望である。CKDの合併により、スタチンに上乗せしたペマフィブラートの有効性が低下することはなかった(13)。また、ペマフィブラートは、中等度または重度の腎機能障害を有する患者においてもeGFRを低下させず、良好な忍容性を示した(13)。ペマフィブラートがCKD患者の心血管イベントを減少させるかどうかについてはPROMINENT試験により重要な知見が得られると思われる。
残存心腎リスクの管理において新たな展望がみえてきた。SGLT-2阻害薬は、2型糖尿病の有無にかかわらず、CKD患者の臨床におけるアンメットニーズに対応するための一つの選択肢となる。さらに、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬のfinerenoneや、CKDに伴うアテローム性脂質異常症の治療薬としてクラス初のSPPARMαであるペマフィブラートなどの新しいアプローチもある。これらの治療薬は、CKDによる高い合併症発症率および死亡率を低下させる上で重要な意味をもつ。
参考文献
- Jager KJ, Fraser SDS. The ascending rank of chronic kidney disease in the global burden of disease study. Nephrol Dial Transplant 2017;32(suppl_2):ii121-ii128.
2. Hill NR, Fatoba ST, Oke JL, et al. Global prevalence of chronic kidney disease – a systematic review and meta-analysis. Plos One 2016;117:e0158765.
3. Jha V, Garcia-Garcia G, Iseki K. et al. Chronic kidney disease: global dimension and perspectives. Lancet 2013; 382: 260–272.
4. Zinman B, Wanner C, Lachin JM, et al. Empagliflozin, cardiovascular outcomes, and mortality in type 2 diabetes. N Engl J Med 2015;373:2117–2128.
5. Neal B, Perkovic V, Mahaffey KW, et al. Canagliflozin and cardiovascular and renal events in type 2 diabetes. N Engl J Med 2017;377: 644–657.
6. Wiviott SD, Raz I, Bonaca MP, et al. Dapagliflozin and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. N Engl J Med 2019;380:347–335.
7. Perkovic V, Jardine MJ, Neal B, et al. Canagliflozin and renal outcomes in type 2 diabetes and nephropathy. N Engl J Med 2019;380:2295-2306.
8. Heerspink HJL, Stefánsson BV, Correa-Rotter R, et al. Dapagliflozin in patients with chronic kidney disease. N Engl J Med 2020;383:1436-1446.
9. EMPA-KIDNEY. https://www.empakidney.org/news/empa-kidney-trial-stops-early-due-to-evidence-of-efficacy.
10. Hager MR, Narla AD, Tannock LR. Dyslipidemia in patients with chronic kidney disease. Rev Endocr Metab Disord. 2017;18:29-40.
11. Moorhead JF, Chan MK, El-Nahas M, et al. Lipid nephrotoxicity in chronic progressive glomerular and tubulo-interstitial disease. Lancet 1982;2:1309–1311.
12. Stanifer JW, Charytan DM, White J, Lokhnygina Y, Cannon CP, Roe MT, Blazing MA. Benefit of ezetimibe added to simvastatin in reduced kidney function. J Am Soc Nephrol. 2017;28:3034-3043.
13. Yokote K, Yamashita S, Arai H, Araki E, Suganami H, Ishibashi S, Of The K-Study Group OB. Long-term efficacy and safety of pemafibrate, a novel Selective Peroxisome Proliferator-Activated Receptor-α Modulator (SPPARMα), in dyslipidemic patients with renal impairment. Int J Mol Sci 2019;203.
