高LDLコレステロールによる疾病負荷:依然として続く課題
2026年10月
LDLコレステロール(LDL-C)の管理は進歩してきたが、Global Burden of Disease(GBD)研究の最新の解析では、LDL-Cに起因する心血管疾患の絶対的な負荷はむしろ増えており、その比重は低〜中程度の社会人口統計学的地域へと移りつつある。
GBD 2023 LDL Cholesterol Collaborators. Global burden of elevated LDL-C. Findings from the Global Burden of Disease Study 2023. JAMA doi:10.1001/jama.2026.8628
研究概要。
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目的 |
1990年から2023年にかけて、LDL-C高値に起因する心血管疾患の負荷が世界・地域・国の各レベルでどう変化したかを推定する。あわせて、人口増加、高齢化、曝露の変化がこの負荷の推移にどの程度寄与したかを定量化する。
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研究デザイン |
全世界を対象とした観察疫学研究
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研究対象集団 |
204の国と地域の25歳以上の成人
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主要評価項目
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集団レベルのLDL-C濃度 心血管疾患は虚血性心疾患(IHD)と虚血性脳卒中の合計と定義 IHDおよび虚血性脳卒中によるLDL-C起因の死亡と障害調整生命年(DALY)の人口寄与割合および率
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方法 |
LDL-Cが38.67 mg/dL(1 mmol/L)上昇するごとの人口寄与割合とDALYを算出した。LDL-C起因の負荷は、人口寄与割合を各アウトカムの死亡数およびDALYに当てはめて求めた。疾病負荷は、出生率・教育・所得の幾何平均で算出する社会人口統計学的指標(SDI)を用い、5区分(高、中高、中、中低、低;2023年データ)別に評価した。 |
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結果 |
1990年から2023年の間に、LDL-C高値に起因する死亡数とDALYはいずれも約39%増加した。LDL-C高値は心血管死の要因として2番目に大きく、世界の総死亡の6.0%、総DALYの3.2%を占めた。LDL-C関連DALYの72%は虚血性心疾患によるものであった。
同じ期間に、LDL-C高値に起因する死亡とDALYの全年齢率は世界全体で8%低下した。年齢調整率も低下した(死亡45.6%、DALY 39.5%)。 それでも、LDL-C関連の絶対的な負荷は1990年から2023年に38.5%増えており、その主因は人口増加と高齢化であった。
ただし、LDL-C起因の負荷はSDI地域によって大きく異なっていた。高SDI国では年齢調整DALY率が持続的に低下した(54%)のに対し、中SDI国では横ばいか、むしろ上昇していた。インドと中国の2か国だけで世界のLDL-C負荷の3分の1を占めていた。
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著者の結論 |
年齢調整率は低下しているものの、人口構成の変化によってLDL-Cの絶対的な負荷は1990年以降増加しており、その中心は中SDI国へ移っている。測定やサーベイランスの不備も残されたままである。LDL-Cによる健康負荷を減らすには、予防、診断、治療アクセスの各面で対策を強化する必要がある。 |
コメント
GBD研究の今回の解析では、LDL-C高値に起因する死亡とDALYの年齢調整率が世界全体で下がっている一方、LDL-C関連心血管疾患の絶対的な負荷は増えていることが示された。背景にあるのは人口増加と高齢化である。SDI地域別にみると負荷の分布は均等ではなく、低〜中SDI地域の占める割合が大きくなってきている。これらの地域でLDL-C曝露が増えているという他の報告(1,2)とも合致しており、LDL-C高値の発見と治療の進歩が、こうした地域の日常診療には等しく届いていないことがうかがえる。
この結果から、低SDI地域でLDL-C高値の診療を改善するには大きな障壁があることがわかる。スクリーニングやサーベイランスが行き届いていないことに加え、治療へのアクセスや費用の問題があり、ジェネリックのスタチンのような安価な薬ですら十分に使われていない。低〜中SDI地域では、心血管イベントの既往がない適応者の約10%、既往のある患者の約20%しかジェネリックのスタチンを処方されていないとの報告があり(3)、世界保健機関(WHO)が掲げる50%という目標を大きく下回っている(4)。
本来予防できるはずのLDL-C関連心血管疾患の負荷に早急に手を打つには、とくに低〜中SDI地域を念頭に置いて、集団レベルの公衆衛生戦略を包括的に見直す必要がある。若年成人期から中年期にかけての累積LDL-C曝露が将来の冠動脈イベントを強く予測することを考えれば(5)、根源的予防(primordial prevention)と一次予防に力を入れることも欠かせない。これは国連の2030年持続可能な開発目標(SDGs)の目標3とも一致する(6)。
参考文献
- Marcus ME, Ebert C, Geldsetzer P, et al. Unmet need for hypercholesterolemia care in 35 low-and middle-income countries: a cross-sectional study of nationally representative surveys. PLoS Med 2021; 18(10):e1003841.
- Ballena-Caicedo J, Zuzunaga-Montoya FE, Loayza-Castro JA, et al.Global prevalence of dyslipidemias in the general adult population: a systematic review and meta-analysis. J Health Popul Nutr 2025;44(1):308.
- Marcus ME, Manne-Goehler J, Theilmann M, et al. Use of statins for the prevention of cardiovascular disease in 41 low-income and middle-income countries: a cross-sectional study of nationally representative, individual-level data. The Lancet Global Health 2022;10: e369-e379.
- World Health Organization (2017). Tackling NCDs: ‘best buys’ and other recommended interventions for the prevention and control of noncommunicable diseases. World Health Organization. https://iris.who.int/handle/10665/259232.
- Zhang Y, Pletcher MJ, Vittinghoff E, et al. Association between cumulative low-density lipoprotein cholesterol exposure during young adulthood and middle age and risk of cardiovascular events. JAMA 2021;6:1406-13.
- United Nations. Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development. https://sdgs.un.org/goals.
Key words: Global Burden of Disease Study; Ischaemic heart disease death; DALYs; LDL cholesterol-related burden; demographic shifts
