Olezarsenは高トリグリセリド血症の治療薬として有望である

2024年06月27日
Bridge–TIMI 73a試験において、アポリポ蛋白C-III(APOC3)のmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであるolezarsen(オレザルセン)は、中等症高トリグリセリド血症を有し心血管リスクが高い患者のトリグリセリド(TG)値を有意に低下させた。
Bergmark BA, Marston NA, Prohaska TA, et al. Olezarsen for hypertriglyceridemia in patients at high cardiovascular risk. N Engl J Med 2024; DOI: 10.1056/NEJMoa2402309

試験の要約

目的 中等症高トリグリセリド血症を有し心血管リスクが高い患者および重症高トリグリセリド血症を有する患者を対象として、olezarsenの有効性および安全性を検討する。
研究デザイン 第IIb相無作為化プラセボ対照二重盲検試験。中等症高トリグリセリド血症を有し心血管リスクが高い成人および重症高トリグリセリド血症を有する成人を、50 mgコホートと80 mgコホートに1:1の比で割り付けた。次に、各コホート内で、olezarsenを月1回皮下投与する群と対応するプラセボを投与する群に、患者を3:1の比で割り付けた。投与期間は12ヵ月とし、その後に13週間の追跡調査期間を設けた。
研究対象集団 中等症高トリグリセリド血症(128例、TG=150~499 mg/dL)または重症高トリグリセリド血症(TG≧500 mg/dL)を有する患者154例(平均年齢:62歳、女性の割合:42%)を、olezarsen 50 mg、olezarsen 80 mgおよび対応するプラセボの月1回投与群(それぞれ58例、57例および39例)に割り付けた。本試験では、独立したデータ安全性モニタリング委員会が安全性を評価した。
主要研究評価項目 主要評価項目:TG値のベースラインから6ヵ月後までの変化率(olezarsenの各用量群とプラセボ群の差として報告)
主な副次評価項目:APOC3、アポリポ蛋白(apo)B、non-HDLコレステロール(non-HDL-C)および低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値の変化量
方法 Olezarsenまたはプラセボを1回以上投与された患者を解析対象とした(modified intention-to-treat集団)。共分散分析モデル(TGのベースライン値の対数変換値をモデルに投入)を用いて、olezarsen群を用量別に併合プラセボ群と比較した。ベースラインからの変化率に関する群間差の最小二乗平均推定値を算出した後、データを併合し、全体の推定値とその95%信頼区間(CI)を求めた。
結果

ベースライン時には、ほぼすべて(97%)の患者が脂質低下療法を受けており、31%の患者が2種類以上の脂質低下療法を受けていた。TG値の中央値は241.5 mg/dL(2.7 mmol/L)であった。ベースライン特性は、概して試験群間でよくバランスがとれていた。

TG値のベースラインから6ヵ月後までの平均低下率は、プラセボ群で7.8%(95% CI:0.2%~15.3%)に対し、olezarsen 50 mg群で57.1%(95% CI:50.9%~63.2%)、olezarsen 80 mg群で60.9%(95% CI:54.7%~67.1%)であった。olezarsenの各用量群における平均低下率のプラセボ群との差の絶対値は、50 mg群で-49.3%(95% CI:-39.5%~-59.0%)、80 mg群で-53.1%(95% CI:-43.4%~-62.9%)であった(各用量群とプラセボ群との比較:p<0.001)(表1)。ベースライン時に中等症高トリグリセリド血症を有していた128例のうち、6ヵ月後にTG値が150 mg/dL未満となった患者の割合は、プラセボ群で4/34例(12%)であったのに対し、50 mg群で42/49例(86%)、80 mg群で42/45例(93%)であった(各用量群とプラセボ群との比較:p<0.001)。

表1. ベースラインおよび6ヵ月後の主な脂質評価項目

評価項目

mg/dL

Olezarsen 50 mg群

(58例)

Olezarsen 80 mg群

(57例)

プラセボ群

(39例)

ベースライン時のTG、中央値(IQR)

230.0

(182.5–331.5)

241.5

(179.5–357.5)

249.3

(219.5–284.5)

6ヵ月後における低下率のプラセボ群との差

49.3%

p<0.001

53.1%

p<0.001

 

 

 

 

ベースライン時のAPOC3、中央値(IQR)

15.3 (12.0–19.3)

13.4 (11.5–17.9)

15.8 (13.2–18.7)

6ヵ月後における低下率のプラセボ群との差

64.2%

p<0.001

73.2%

p<0.001

 

 

 

 

 

ベースライン時のVLDL-C、中央値(IQR)

41.0 (34.0–62.5)

43.0 (31.0–56.7)

41.5 (36.0–61.0)

6ヵ月後における低下率のプラセボ群との差

46.2%

p<0.001

49.7%

p<0.001

 

 

 

 

 

ベースライン時のnon-HDL-C、中央値(IQR)

132.2

(103.5–156.5)

126.0

(110.0–150.5)

134.5

(110.0–161.5)

6ヵ月後における低下率のプラセボ群との差

25.4%

23.1%

 

 

 

 

 

ベースライン時のapoB、中央値(IQR)

90.8 (75.5–105.0)

93.0 (78.0–107.0)

94.0 (78.0–114.5)

6ヵ月後における低下率のプラセボ群との差

18.2%

p<0.001

18.5%

p<0.001

 

 

 

 

 

ベースライン時のLDL-C、中央値(IQR)

83.8 (59.5–106.0)

80.5 (62.0–102.0)

81.5 (62.0–104.5)

6ヵ月後における低下率のプラセボ群との差

9.9%

NS

7.7%

NS

 

NS:統計学的に有意でない、VLDL-C:超低比重リポ蛋白コレステロール

 

Olezarsenの各用量群では、APOC3、apoBおよびnon-HDL C値も有意に低下したが、LDL-C値の有意な変化は認められなかった(表1)。

 

臨床的に意味のある肝アミノトランスフェラーゼ値の発現頻度は極めて低く、試験群間で有意差は認められなかった。ビリルビン値の大幅な上昇は認められなかった。Olezarsen投与期間中、重度の血小板減少症を発現した患者はいなかった。

 

著者の結論 中等症高トリグリセリド血症を有し心血管リスクが高い患者を主な対象として、olezarsenを50 mgまたは80 mgの用量で月1回投与したとき、TG値がプラセボ群と比較して有意に低下し、重大な安全性の懸念は認められなかった。Olezarsenの投与により、動脈硬化リスクのマーカーであるapoB値およびnon-HDL-C値も意味のある低下を示した。

コメント

TGリッチリポ蛋白およびそのレムナントの高値がアテローム性動脈硬化性心血管疾患の原因となるリスク因子であることについては、観察研究および遺伝学的研究からの様々なエビデンスや、臨床試験からの情報が得られている(1)。しかし現時点では、エビデンスに基づく最善の予防療法を受けている患者において、TG値の低下と心血管リスクの低下が関連するというエビデンスは、[REDUCE-IT(Reduction of Cardiovascular Events with Icosapent Ethyl–Intervention Trial)(1)以外には]十分に得られていない(3,4)。TGリッチリポ蛋白の代謝は複雑であるため、様々な代謝機構を標的として作用し、良好な忍容性を示す新規TG低下療法の探索が続けられている。

Olezarsen(ISIS 678354)は、開発段階にあるN-アセチルガラクトサミン結合型アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、APOC3のmRNAに作用してTG値を低下させる。健康被験者を対象とする第I相試験(5)および小規模な第II相用量設定試験(6)で良好な結果が得られたことに基づき、Bridge–TIMI 73a試験では、中等症または重症の高トリグリセリド血症患者を対象として、olezarsenの有効性および安全性が検討された。本試験に組み入れられた患者の大半が中等症高トリグリセリド血症[150~499 mg/dL(1.7~5.6 mmol/L)]を有しており、患者の22%がアテローム性動脈硬化性心血管疾患に罹患していた。ベースライン時のTG値の中央値は241.5 mg/dL(2.7 mmol/L)であり、この患者集団がTG低下薬の効果を評価するための対象として適切であることが示唆された。

本試験の結果は、olezarsen投与がTG値の低下に有効であり、投与開始6ヵ月後のTG値が約50%低下したこと(低下率のプラセボ群との差:50 mg群で49.3%、80 mg群で53.1%)、また、olezarsenの効果が追跡調査期間にわたり持続したことを示している。Olezarsen投与に伴い、動脈硬化リスクの他のマーカーにも意味のある低下[non-HDL-C(約25%低下)、apoB(18%低下)など)]が認められた。LDL-C値の低下(約8~10%)も認められたが、統計学的に有意なものでなかった。重要な点として、olezarsen投与に関連して、有害な安全性シグナルは検出されなかった。したがって、Bridge–TIMI 73a試験の結果は、olezarsenのより大規模でより長期の試験の実施を支持するものである。

References 1. Ginsberg HN, Packard CJ, Chapman MJ, et al. Triglyceride-rich lipoproteins and their remnants: metabolic insights, role in atherosclerotic cardiovascular dis ease, and emerging therapeutic strategies: a consensus statement from the European Atherosclerosis Society. Eur Heart J 2021;42:4791-806.
2. Bhatt DL, Steg PG, Miller M, et al. Cardiovascular risk reduction with icosapent ethyl for hypertriglyceridemia. N Engl J Med 2019;380:11-22.
3. Nicholls SJ, Lincoff AM, Garcia M, et al. Effect of high-dose omega-3 fatty acids vs corn oil on major adverse cardiovascular events in patients at high cardiovascular risk: the STRENGTH randomized clinical trial. JAMA 2020;324: 2268-80.
4. Das Pradhan A, Glynn RJ, Fruchart JC, et al. Triglyceride lowering with pemafibrate to reduce cardiovascular risk. N Engl J Med 2022;387:1923-34.
5. Alexander VJ, Xia S, Hurh E, et al. N-acetyl galactosamine-conjugated antisense drug to APOC3 mRNA, triglycerides and atherogenic lipoprotein levels. Eur Heart J 2019;40:2785-9.
6. Tardif JC, Karwatowska-Prokopczuk E, Amour ES, et al. Apolipoprotein C-III reduction in subjects with moderate hypertriglyceridaemia and at high cardiovascular risk. Eur Heart J 2022;43:1401-12.
Key words triglycerides; triglyceride-rich lipoproteins; cardiovascular disease; apolipoprotein CIII; olezarsen