R3i社説

2021年1月
残存心血管リスクに対するオメガ-3脂肪酸:解決策より疑問が多い
Prof. Jean Charles Fruchart, Prof. Michel Hermans, Prof. Pierre Amarenco
編集デスクから

オメガ-3脂肪酸の残存心血管リスクを低下させる潜在的役割が長年検討されてきた。メタ解析によるこの問題の評価が行われてきたが、最近の解析で冠動脈性心疾患(CHD)や心血管疾患による死亡に加えて、心血管イベントリスクもオメガ-3補充療法によって有意に低下することが示された 1 。ただし、これらの試験では用量範囲が広く(376 mg/日~4 g/日)、最もよく使用されていた用量が1 g未満であったことは重要である 1 。

オメガ-3脂肪酸に関する以前のアウトカム研究では様々な結果が得られている。JELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)では高コレステロール血症の患者において、エイコサペンタエン酸(EPA)1,800 mg/日とスタチンの併用がスタチン単独療法と比較して心臓死、心筋梗塞、不安定狭心症および冠動脈血行再建術からなる心血管エンドポイントの19%の相対的減少をもたらした 2 。対照的に、用いた用量はより低用量[1 g、840 mg EPAとドコサヘキサエン酸(DHA)を含有]ではあるが、VITAL(Vitamin D and Omega-3 Trial)とASCEND(A Study of Cardiovascular Events in Diabetes)の両試験では、臨床的に明確なアテローム動脈硬化性心血管疾患(AtheroSclerotic CardioVascular Disease: ASCVD)を有さない患者において、主要心血管エンドポイントの減少は認められなかった 3,4 。

REDUCE-IT(Reduction of Cardiovascular Events with Icosapent Ethyl–Intervention Trial)は、高TG血症を有する(ASCVDあり/なし)高リスク患者に特に的を絞った画期的な研究である 5 。高用量(4 g/日)のイコサペント酸エチル(高純度EPAエステル)の投与により、主要複合エンドポイント(心血管死、非致死的心筋梗塞または脳卒中、冠動脈血行再建術もしくは不安定狭心症)が25%減少した。これはTGの減少が軽度(18%)であったにもかかわらず達成された 5 。ベースラインのTGが臨床効果の大きさに影響したというエビデンスは認められなかったが 6 、達成された血漿EPA値と心血管効果の間には関連が認められた 7 。

REDUCE-ITで有望な結果が得られた後の、STRENGTH(Outcomes Study to Assess STatin Residual Risk Reduction With EpaNova in HiGh CV Risk PatienTs With Hypertriglyceridemia)の最終報告 8 は期待外れの結果であった。STRENGTHは、有益性を示す可能性が低いという独立データモニタリング委員会の勧告に基づき2020年1月に終了した。この結果は、残存心血管リスクのある患者に対するこれらの薬剤の使用に関して多くの課題を提起した。

REDUCE-ITの結果は有望であったのにSTRENGTHの結果で有意差が認められなかったのはなぜか?
この2試験の結果の矛盾はいくつかの原因が考えられる。第一に、各試験で使用されたオメガ-3脂肪酸の製剤は異なっていた。REDUCE-ITでは高用量EPAを評価したのに対して、STRENGTHではEPAとDHA両方を含有するカルボン酸製剤(Epanova)を試験した。EPAの用量は低いものの、同製剤は肝での代謝を必要とせず、イコサペント酸エチルと同様の全身性および組織内EPA値を達成可能である。実際に、12ヵ月後の血清EPA値の上昇は、STRENGTHでは67%であったのに対してREDUCE-ITでは63%であった 5,8 。

関係した可能性のあるその他の因子として、試験対象集団の特性、治療アドヒアランス、対照薬の影響が挙げられる。試験対象集団に関しては、REDUCE-ITでは冠動脈疾患のある登録患者の割合が高かった(71% vs. STRENGTHでは56%)。治療アドヒアランスと試験継続についてはREDUCE-ITとSTRENGTHの間に明らかな差は認められなかった。これに対し、対照薬は明らかに問題である。REDUCE-ITでは対照薬として鉱物油が使用された。これが低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)と高感度C反応性蛋白(hsCRP)の両方に対して好ましくない影響を及ぼし、イコサペント酸エチルによる臨床効果の大きさを誇張した可能性がある。対照的に、STRENGTHで対照薬として使用されたコーンオイルはLDL-C、アポリポ蛋白BまたはhsCRPを上昇させなかったことから、コーンオイルはニュートラルな対照薬であったことが示唆される。最後に、支持するエビデンスは存在しないが、DHAがEPAの効果を中和する可能性が示唆されている。

研究間で一致した効果はあったのか?
両研究は心房細動(AF)リスクの危険信号を示した点において一致していた。特に、STRENGTHではAFのリスクが69%上昇し 8 、REDUCE-ITでもAFまたは心房粗動による入院の有意な増加がみられた(p=0.004) 5 。最近のOMEMI試験(OMega-3 fatty acids in Elderly patients with Myocardial Infarction)でも同様のAFリスク上昇が認められた 9 。オメガ-3脂肪酸が、過去の試験では主に心不全または左室機能障害を有さない患者におけるAF予防を目的として広く検討されたことを考えると、この知見は注目に値する。しかしながら、GISSI-HF試験の解析では、オメガ-3脂肪酸1 g/日によって慢性心不全患者のAF発生が減少するというエビデンスは得られなかった 10 。

高齢患者におけるAF有病率の上昇を考えると、REDUCE-IT、STRENGTHおよびOMEMIによる最新知見は明らかに臨床医にとって懸念すべき点である。さらに、これらの結果は、TGを減少させ残存心血管リスクを潜在的に低下させる効果のある追加治療の必要性を強く示すものである。この問題に対する新規アプローチを求める競争は始まっており、我々はペマフィブラートを用いたPROMINENTの結果によって最初の洞察が得られることを期待している 11 。

参考文献

  1. Hu Y, Hu FB, Manson JE. Marine omega-3 supplementation and cardiovascular disease: an updated meta-analysis of 13 randomized controlled trials involving 127 477 participants. J Am Heart Assoc 2019;8:e013543.
    2. Yokoyama M, Origasa H, Matsuzaki M, et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet. 2007;369:1090–1098.
    3. Manson JE, Cook NR, Lee IM, et al. Marine n-3 fatty acids and prevention of cardiovascular disease and cancer. N Engl J Med 2019; 380:23–32.
    4. Group ASC, Bowman L, Mafham M, et al. Effects of n-3 fatty acid supplements in diabetes mellitus. N Engl J Med 2018; 379:1540–1550.
    5. Bhatt DL, Steg PG, Miller M, et al; REDUCE-IT Investigators. Cardiovascular risk reduction with icosapent ethyl for hypertriglyceridemia. N Engl J Med 2019;380:11-22.
    6. Bhatt DL, Steg PG, Miller M, et al. Reduction in first and total ischemic events with icosapent ethyl across baseline triglyceride tertiles. J Am Coll Cardiol 2019;74: 1159 – 61.
    7. https://www.acc.org/latest-in-cardiology/articles/2020/03/24/16/41/mon-1045-eicosapentaenoic-acid-levels-in-reduce-it-acc-2020. 2020. [Accessed December 3, 2020].
    8. Nicholls SJ, Lincoff AM, Garcia M, et al. Effect of high-dose omega-3 fatty acids vs corn oil on major adverse cardiovascular events in patients at high cardiovascular risk: the STRENGTH randomized clinical trial. JAMA 2020; doi: 10.1001/jama.2020.22258
    9. Kalstad AA, Myhre PL, Laake K, et al, on behalf of the OMEMI Investigators. Effects of n-3 fatty acid supplements in elderly patients after myocardial infarction: a randomized controlled trial. Circulation 2020; doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.052209.
    10. Aleksova A, Masson S, Maggioni AP, et al. n-3 polyunsaturated fatty acids and atrial fibrillation in patients with chronic heart failure: the GISSI-HF trial. Eur J Heart Fail 2013;15:1289-95.
    11. Pradhan AD, Paynter NP, Everett BM et al. Rationale and design of the Pemafibrate to Reduce Cardiovascular Outcomes by Reducing Triglycerides in Patients with Diabetes (PROMINENT) study. Am Heart J 2018;206:80-93.