R3i社説
2024年7月
末梢動脈疾患に必要とされる対策-PROMINENT試験から得たヒントとは
Prof. Jean-Charles Fruchart, Prof. Michel P. Hermans, Prof. Pierre Amarenco
末梢動脈疾患(PAD)の問題はますます深刻化している。PAD患者は世界で2億人以上と推計され、その40%以上は低・中所得国の患者である(1,2)。PAD患者は、四肢イベントのリスクがあるだけでなく、心血管イベントのリスクも高い(3)。2型糖尿病患者において初期の血管合併症として最も多いものの一つがPADであり(4)、一般集団よりもPADのリスクが高く、重症度も高い(5)。それにもかかわらず、2型糖尿病患者ではPADのリスクが過小評価されており、一般に過小診断されて治療も十分に行われていない。
PADの管理には非薬理学的方法と薬理学的介入がある(3)。プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型阻害薬、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬などの新しい治療薬は、心血管イベントと四肢イベントの両方を抑制する臨床的ベネフィットをもたらすことが明らかにされており、これらの知見は、最近改訂されたPADの管理に関する臨床ガイドラインに反映されている(3)。しかしながら、実臨床ではまだ十分に実践されていない。さらに、患者の生活の質(QOL)に悪影響を及ぼす下肢潰瘍やそれによる壊疽など、PADに関連する末梢への影響を食い止めるための治療選択肢には臨床的なアンメットメディカルニーズが存在している。
Pemafibrate to Reduce Cardiovascular Outcomes by Reducing Triglycerides in Participants with Diabetes(PROMINENT)試験では、ペマフィブラートがPADの治療薬となる可能性が示唆された。主要評価項目である4項目の主要有害心血管イベント(4-point MACE、すなわち、非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈血行再建術または心血管死)については中立的な結果であったが、副次的評価項目のイベント(PADの新規発症または悪化)の発生率はペマフィブラート群の方がプラセボ群より低かった[イベントが発生した被験者136例 vs. 158例、ハザード比=0.87、95%信頼区間:0.69~1.09](6)。副次的解析で得られた予備的なデータ(現時点では抄録のみ入手可能)によると、ペマフィブラートにより下肢虚血性潰瘍または壊疽の相対リスクが37%低下したが、これらのイベントの絶対発現数は少なかった(ペマフィブラート群35例vs. プラセボ群56例)(7)。潜在的機序はまだ完全には解明されていないが、PROMINENT試験の結果間の相違は(主要評価項目 vs. PADイベント)、ペマフィブラートの大血管に対する作用と微小血管系に対する作用が異なることに関連する可能性がある。その裏付けとして、Fenofibrate Intervention and Event Lowering Diabetes(FIELD)試験では、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)アゴニストであるフェノフィブラートが遠位での下肢切断を減少させることが示された(8)。このベネフィットに関与する基本的機序としては、狭義の血管新生(angiogenesis)、広義の血管新生(neovascularization)および創傷治癒に対する作用が挙げられる(9,10)。また、遺伝学的な因果推論法により、PADの病態生理における主要なパスウェイを代表するバイオマーカー(リポ蛋白の調節に関与するものを含む)が最大10個同定され、因果関係の可能性が示唆されている(11)。
PROMINENT試験の副次的解析に関する詳細な情報が待たれるところであるが、予備的な結果は有望であり、ペマフィブラートが2型糖尿病患者におけるPADの治療薬となる可能性が示唆されている。PADに伴う四肢の慢性的な虚血性合併症を予防するための治療選択肢がないことを考慮すると、これらの結果はさらに研究を進めるに値する。人口の高齢化、肥満率の増加、糖尿病の有病率の増加に伴い、PADの負担はますます増大することが予想され、このPADの管理におけるギャップは新たに注目すべき点である。
参考文献
- Nordestgaard BG. Triglyceride-rich lipoproteins and atherosclerotic cardiovascular disease. Insights from epidemiology, genetics, and biology, Circ Res 2016;118:547-563.
2. Bhatt DL, Steg PG, Miller M, et al. Cardiovascular risk reduction with icosapent ethyl for hypertriglyceridemia. N Engl J Med 2019;380:11-22.
3. Friedrich M, Aigner A. Therapeutic siRNA: State‑of‑the‑Art and future perspectives. BioDrugs 2022;36:549–571.
4. Chan DC, Watts GF. ANGPTL3 and ApoC-III inhibitors for treating hypertriglyceridemia in context: horses for courses? Curr Opin Lipidol 2024;35:101-109.
5. Giammanco A, Spina R, Cefalù AB, Averna M. APOC-III: a gatekeeper in controlling triglyceride metabolism. Curr Atheroscler Rep 2023;25:67–76.
6. Gaudet D, Clifton P, Sullivan D, et al. RNA interference therapy targeting apolipoprotein C-III in hypertriglyceridemia. NEJM Evid 2023;2(12):EVIDoa2200325.
7. Gaudet D, Pall D, Watts GF, et al. Plozasiran (ARO-APOC3) for severe hypertriglyceridemia: the SHASTA-2 randomized clinical trial. JAMA Cardiol 2024;9:620-630.
8. Ballantyne CM, Vasas S, Azizad M, et al. Plozasiran, an RNA interference agent targeting APOC3, for mixed hyperlipidemia. N Engl J Med 2024; doi: 10.1056/NEJMoa2404143.
9. Arrowhead Pharmaceuticals reports successful topline results for plozasiran from the pivotal phase 3 palisade study in patients with familial chylomicronemia syndrome. Arrowhead Pharmaceuticals Inc. June 3, 2024. Accessed June 3, 2024. https://ir.arrowheadpharma.com/news-releases/news-release-details/arrowhead-pharmaceuticals-reports-successful-topline-results
10. Arrowhead receives FDA Fast Track designation for aro-APOC3. Arrowhead Pharmaceuticals Inc. March 20, 2023. Accessed May 28, 2024. https://ir.arrowheadpharma.com/news-releases/news-release-details/arrowhead-receives-fda-fast-track-designation-aro-apoc3
11. Kersten S. ANGPTL3 as therapeutic target. Curr Opin Lipidol 2021;32:335-341.
12. Rosenson RS, Gaudet D, Hegele RA, et al. Zodasiran, an RNAi therapeutic targeting ANGPTL3, for mixed hyperlipidemia. N Engl J Med 2024; doi: 10.1056/NEJMoa2404147
