REDUCE-IT:イコサペント酸エチルのベネフィットはリスクが最も高い患者で最も大きい
2024年6月
REDUCE-IT(Reduction of Cardiovascular Events with Icosapent Ethyl–Intervention Trial)の最新の解析では、イコサペント酸エチルは、トリグリセリド高値のアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者において、ベースラインの残存リスクにかかわらず主要心血管イベント(MACE)のリスクを一貫して低下させた。しかし、ベースラインの残存リスクが高いほど、絶対治療効果は高かった。
Burger PM, Bhatt DL, Dorresteijn JAN, et al. アテローム性動脈硬化性心血管疾患患者におけるベースラインの残存リスク別にみたイコサペント酸エチルの効果:REDUCE-ITの結果。Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother 2024; doi: 10.1093/ehjcvp/pvae030.
試験の要約
|
目的 |
ASCVD患者を対象として、個々のベースラインの心血管リスク別に、MACEに対するイコサペント酸エチルの相対治療効果および絶対治療効果を評価する。
|
|
研究デザイン |
REDUCE-IT(無作為化二重盲検プラセボ対照試験)の解析 |
|
研究対象集団 |
REDUCE-ITは、心血管疾患患者、または糖尿病とその他のリスク因子を1つ以上有する50歳以上の患者のうち、空腹時トリグリセリド値が1.69~5.63 mmol/L(150~499 mg/dL)で、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が安定している患者8,179例を対象とした。イコサペント酸エチル2 g 1日2回投与群または対応するプラセボ群に患者を無作為に割り付けた。この解析は、ベースライン時にASVCDを有する5,785例(平均年齢63.2歳、男性78%)を対象とした。患者の78%が冠動脈疾患を有し、20%が脳血管疾患、12%が末梢動脈疾患、1%が腹部大動脈瘤を有していた。ほぼすべての患者(96%)が中~高強度スタチン療法を受けていた。
|
|
主要研究評価項目
|
主要評価項目:本解析における有効性の主要評価項目は、3-point MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞または非致死性脳卒中の最初の発生からなる複合評価項目)であった。
|
|
方法 |
欧州心臓病学会のガイドラインでは、ベースライン時のMACEの5年リスクを推定する際はSMART2リスクスコアを用いるよう、推奨されている。ベースラインのリスクによるイコサペント酸エチルの相対治療効果の修飾について、治療とリスクとの交互作用を含むCox比例ハザードモデルで評価した。ベースラインのリスクの四分位で層別化して治療効果を評価した。 |
|
結果 |
主なリスク因子と3-point MACEの推定5年リスクを四分位別に表1に要約する。全体として、リスクの四分位が上昇すると、脂質以外の心血管リスク因子のレベルは上昇したが、脂質値および脂質低下療法の使用は比較的一定のままであった。
表1. 主なリスク因子と3-point MACEの推定5年リスク
リスクの第1四分位 (n=1,452)
リスクの第2四分位 (n=1,442) リスクの第3四分位 (n=1,445) リスクの第4四分位 (n=1,446)
SMART2による3-point MACEの推定5年リスク、% 平均値(範囲)
9.0 (3.6-11.4)
13.7 (11.5-16.0)
19.3 (16.1-23.3)
33.7 (23.4-83.0)
リスク因子
喫煙者、n(%) 101 (7%) 239 (17%) 281 (19%) 335 (23%)
糖尿病、n(%) 236 (16%) 516 (36%) 703 (49%) 946 (65%)
Non-HDL-C、mmol/L 3.0±0.5 3.1±0.5 3.1±0.5 3.2±0.5
CRP、mg/L 中央値(IQR) 1.3 (0.7-2.4) 2.1 (1.0-3.7) 2.4 (1.2-4.6) 3.1 (1.5-6.2)
データは特に記載のない限りn(%)または平均値±SDで示す。 略語:CRP:C反応性蛋白、HDL-C:高比重リポ蛋白コレステロール、IQR:四分位範囲
4.8年間(中央値)の追跡調査期間中、MACEが認められた患者はイコサペント酸エチル群で361例、プラセボ群で489例であり[ハザード比=0.72、95%信頼区間(CI):0.63~0.82]、絶対リスク減少率(ARR)は4.4%(2.6~6.2%)であった。
ベースラインのリスクとイコサペント酸エチルの相対治療効果との間に有意な交互作用は認められなかったが(3-point MACEについてp=0.106)、ベースラインのリスクが高いと相対ベネフィットがやや弱まるようであった。しかし、イコサペント酸エチルの絶対治療効果は、ベースラインのリスクが最も低い患者でもすでに大きく[絶対リスク減少率(ARR)=3.9%]、ベースラインのリスクの上昇に伴って増大した(表2)。
表1. ベースラインのリスクの四分位別にみたイコサペント酸エチルの相対治療効果と絶対治療効果
リスクの第1四分位 (n=1,452)
リスクの第2四分位 (n=1,442) リスクの第3四分位 (n=1,445) リスクの第4四分位 (n=1,446)
ハザード比(95% CI) 0.62 (0.43-0.88) 0.66 (0.48-0.92) 0.69 (0.53-0.90) 0.78 (0.63-0.96)
ARR、%(95% CI) 3.9% (1.0-6.8) 4.3% (1.2-7.3) 5.1% (1.4-8.7) 5.6% (1.3-10.0)
治療必要数(NNT) 26 (15-98) 24 (14-84) 20 (11-70) 18 (10-77)
|
|
著者の結論 |
トリグリセリド高値のASCVD患者では、ベースラインのCVDリスクの四分位にかかわらず、イコサペント酸エチルによりMACEのリスクが有意に低下する。絶対治療効果は、ベースラインの心血管リスクの上昇に伴って増大するが、リスクが最低四分位の患者でもすでに大きい。 |
コメント
REDUCE-ITの最新の解析により、ベースラインの残存リスクの範囲を通じた、トリグリセリド高値のASCVD患者におけるイコサペント酸エチル投与のベネフィットが確認された。治療の絶対ベネフィットは、腎機能障害(推算糸球体濾過量<60 mL/min/1.73 m2)患者、冠動脈バイパス術の既往歴のある患者、心筋梗塞の既往歴のある患者で報告されているものと同程度であった(1-3)。この結果を強固なものとする要因として、妥当性が確認されたリスクモデル(SMART2)を用いたこと、また、固有の限界を伴うサブグループ解析を使用せずに、多変量リスクモデルで推定した治療と個々のベースラインのリスクとの交互作用を評価したことが挙げられる。
重要な所見として、イコサペント酸エチルの絶対ベネフィットはベースラインのリスクの上昇に伴って増大し(NNTも減少し)、リスクの高い患者におけるイコサペント酸エチルの投与に関するガイドラインの推奨事項と一致した(4)。その一方で、注目すべき点として、リスクの四分位が最も低い患者でも、イコサペント酸エチル投与のベネフィットはすでに大きかった(ARR=3.9%)。これらの低リスク患者は一般に余命が長いことを考慮すると、イコサペント酸エチルの長期間の投与では、ASCVDおよびトリグリセリド高値を伴う高リスク患者の場合よりも、残存心血管リスクの低減による生涯のベネフィットは大きくなると予想される。
References
1. Majithia A, Bhatt DL, Friedman AN, et al. Benefits of icosapent ethyl across the range of kidney function in patients with established cardiovascular disease or diabetes: REDUCE-IT RENAL. Circulation 2021;144:1750-9.
2. Verma S, Bhatt DL, Steg PG, et al. Icosapent ethyl reduces ischemic events in patients with a history of previous coronary artery bypass grafting: REDUCE-IT CABG. Circulation 2021;144:1845-55.
3. Gaba P, Bhatt DL, Steg PG, et al. Prevention of cardiovascular events and mortality with icosapent ethyl in patients with prior myocardial infarction. J Am Coll Cardiol 2022;79:1660-71.
4. Visseren FLJ, Mach F, Smulders YM, et al. 2021 ESC Guidelines on cardiovascular disease prevention in clinical practice. Eur Heart J 2021;42:3227-337.
Key words: Residual cardiovascular risk; REDUCE-IT; absolute risk reduction; icosapent ethyl.
