Plozasiran:混合型高脂血症における新しいAPOC3 siRNA薬

2024年8月

肝細胞のAPOC3を標的にしたファースト・イン・クラスの低分子干渉RNA(siRNA)薬であるplozasiranは、混合型高脂血症患者のトリグリセリド値を大幅に低下させた。
混合型高脂血症の治療のためのAPOC3を標的とするRNA干渉薬plozasiran

Ballantyne CM, Vasas S, Azizad M, et al. N Engl J Med 2024; doi: 10.1056/NEJMoa2404143

試験の要約

目的

混合型高脂血症患者を対象として、plozasiranの安全性および有効性を検討する。

研究デザイン

48週間の第2b相、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験。本試験は米国、欧州、ニュージーランド、オーストラリア、カナダの36施設で実施された。

研究対象集団

トリグリセリド(TG)値150499 mg/dL、かつ低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C70 mg/dL以上または非高比重リポ蛋白コレステロール(non-HDL-C)値100 mg/dL以上と定義される混合型高脂血症の患者。登録時、患者は2週間以上安定した食生活を続け、4週間以上安定した最大耐用量のスタチンを服用し(スタチン服用ができない場合またはその意思がない場合を除く)、安定した用量の基礎治療薬を服用していた。

主要研究評価項目

主要評価項目:ベースラインから24週までの空腹時TG値の最小二乗平均変化率。

方法

患者を4つの各コホート内でplozasiranまたはプラセボに31の比率で無作為割り付けした。第13コホートには、1日目および12週目(年4回投与)にplozasiran10 mg25 mgまたは50 mg)またはプラセボを皮下投与した。第4コホートには、1日目および24週目(年2回投与)にplozasiran 50 mgまたはプラセボを投与した。プラセボ投与患者のデータは併合した。有効性および安全性の解析は、plozasiranまたはプラセボを1回以上投与されたすべての患者に基づいて行われた。

結果

全体で353例(平均年齢61歳、平均BMI 32 kg/m2)がplozasiranまたはプラセボの投与に無作為割り付けされ、そのうち324例(91.8%)が試験を完了した。全体で5365%が男性であった。ベースライン時の脂質平均値は、TG 244 mg/dLLDL-C 103 mg/dLnon-HDL-C 151 mg/dL、レムナントコレステロール47 mg/dLであった。全体で18%の患者はLDL-C70 mg/dL未満であり、92%の患者がスタチンを服用していた(高強度スタチン54%)。

ベースラインから24週までのTG値の最小二乗平均変化率を表1に要約する。plozasiran投与により、TG値がプラセボに比べて有意に低下した(p<0.001)。TG値の低下効果は投与開始後4週で認められた。また、plozasiran投与によりAPOC3もプラセボに比べて有意に低下した。その最小二乗平均変化率は、10 mg4回投与群:−57.3%95% CI −66.6−48.1)、25 mg4回投与群:−72.5%95% CI −81.7−63.3)、50 mg4回投与群:−78.5%95% CI −87.8−69.3)であり、TG値の変化率と強い正の相関を示した。non-HDL-Cの低下も認められたが(50 mg4回投与群で−24.2%)、これは主にレムナントコレステロール値の低下(50 mg4回投与群47.5%低下、95% CI 61.433.7)によるものであった。

24週目における空腹時TG150 mg/dL未満の達成率は、10 mg4回投与群79%25 mg4回投与群92%50 mg4回投与群92%50 mg2回投与群77%であった。

1. ベースラインのTG値および24週目の変化

併合プラセボ群

Plozasiran

10 mg4回投与群

Plozasiran

25 mg4回投与群

Plozasiran

50 mg4回投与群

Plozasiran

50 mg2回投与群

N

87

67

67

66

66

脂質(mg/dL

ベースライン時のTG

237.2±76.2

253.2±81.4

234.1±72.7

250.3±81.3

248.0±80.6

最小二乗平均変化率(95% CIvs. プラセボ

−49.8

(−59.0, −40.6)

−56.0

(−65.1, −46.8)

−62.4

(−71.5, -53.2)

−44.2

(−53.4, −35.0)

血糖コントロールの悪化は,プラセボ群では10%の患者に認められ、plozasiran 10 mg4回投与群では12%25 mg4回投与群では7%50 mg4回投与群では20%50 mg2回投与群では21%の患者に認められた。

著者の結論

混合型高脂血症患者を対象とした本無作為化対照試験において、plozasiranはプラセボと比較して24週目のTG値を有意に低下させた。臨床アウトカム試験を実施する必要がある。

コメント

TGおよびLDL-Cの高値を特徴とする混合型高脂血症は、肥満および2型糖尿病の有病率の増加につれて、増加の一途をたどっている。TG値高値はTG-richリポ蛋白およびそのレムナントのサロゲートマーカーであるとされているが,これはリポ蛋白粒子1個が最大でLDL4倍のコレステロールを運ぶことが明らかになっているためである(1)。TG-richリポ蛋白の増加はアテローム形成を促進すること(2)、ヒトでは動脈硬化性心血管疾患のリスク増加に関連すること(1,3)がメカニズム研究で示されている。これらの所見は、混合型高脂血症に関連するTG高値とLDL-C高値の両方を治療する必要性を強調している。

髙いLDL-C低下効果が得られる治療を受けていても、TG高値が続く患者は、依然として心血管イベントの残存リスクが高い(1, 4-6)。そのため、TG-richリポ蛋白代謝の様々な標的を対象とした新しい治療アプローチの開発が進んだ。そうした標的の一つが、TG-richリポ蛋白代謝の重要な制御因子であるアポリポ蛋白C3APOC3)である。このアプローチは、APOC3機能喪失型変異を有する人はTG値が低く、心血管イベントのリスクも低いことを示す研究により、支持されている(7-9)。

APOC3の発現を抑制するsiRNAを用いた治療は、その特異性、効力および可逆性の高さから、大きな関心を集めている。plozasiranは、肝臓でのAPOC3発現を抑制するN-アセチルガラクトサミン結合siRNA薬である。健康被験者および高トリグリセリド血症患者を対象とした先行試験において、plozasiranAPOC3値およびTG値の用量依存的な低下作用を示した(10)。

本試験では、plozasiran投与により混合型高脂血症患者のTG値が著明かつ持続的に低下し、ほとんどの患者が24週目にTG150 mg/dL未満を達成した。さらに、延長追跡調査の結果、plozasiranの効果は最終投与後36週間を経過しても持続していることが確認された。50 mg4回投与群および年2回投与群でみられたグリコヘモグロビン値の上昇は、食後の血糖変化に関連している可能性がある。同様の血糖コントロールの悪化は、APOC3のアンチセンスオリゴヌクレオチド薬volanesorsenを投与された家族性カイロミクロン血症症候群の患者でも報告されているが、血糖値の恒常性に対する長期的な有害作用は認められていない(11)。

以上より、第2相試験で得られた有望な結果から、plozasiran投与によるTG値低下に関連して残存する心血管リスクが低下するか否かを調べる心血管アウトカム試験を含め、plozasiranのさらなる臨床開発が支持される。

References

1. Nordestgaard BG. Triglyceride-rich lipoproteins and atherosclerotic cardiovascular disease: new insights from epidemiology, genetics, and biology. Circ Res 2016;118:547-563.

2. Ginsberg HN, Packard CJ, Chapman MJ, et al. Triglyceride-rich lipoproteins and their remnants: metabolic insights, role in atherosclerotic cardiovascular disease, and emerging therapeutic strategies — a consensus statement from the European Atherosclerosis Society. Eur Heart J 2021;42:4791-806.

3. Nordestgaard BG, Varbo A. Triglycerides and cardiovascular disease. Lancet 2014;384:626-635.

4. Langsted A, Madsen CM, Nordestgaard BG. Contribution of remnant cholesterol to cardiovascular risk. J Intern Med 2020;288:116-127.

5. Varbo A, Benn M, Tybjærg-Hansen A, et al. Remnant cholesterol as a causal risk factor for ischemic heart disease. J Am Coll Cardiol 2013;61:427-436.

6. Schwartz GG, Abt M, Bao W, et al. Fasting triglycerides predict recurrent ischemic events in patients with acute coronary syndrome treated with statins. J Am Coll Cardiol 2015;65:2267-2275.

7. Jørgensen AB, Frikke-Schmidt R, Nordestgaard BG, Tybjærg-Hansen A. Loss-of-function mutations in APOC3 and risk of ischemic vascular disease. N Engl J Med 2014;371:32-41.

8. TG and HDL Working Group of the Exome Sequencing Project, National Heart, Lung, and Blood Institute. Loss-of-function mutations in APOC3, triglycerides, and coronary disease. N Engl J Med 2014;371:22-31.

9. Wulff AB, Nordestgaard BG, Tybjærg-Hansen A. APOC3 loss-of-function mutations, remnant cholesterol, low-density lipoprotein cholesterol, and cardiovascular risk: mediation- and meta-analyses of 137895 individuals. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2018;38:660-668.

10. Gaudet D, Clifton P, Sullivan D, et al. RNA interference therapy targeting apolipoprotein C-III in hypertriglyceridemia. NEJM Evid 2023;2(12):EVIDoa2200325.

11. Jones A, Peers K, Wierzbicki AS, et al. Long-term effects of volanesorsen on triglycerides and pancreatitis in patients with familial chylomicronaemia syndrome (FCS) in the UK Early Access to Medicines Scheme (EAMS). Atherosclerosis 2023;375:67-74.

Key words: apolipoprotein C3; plozasiran; triglyceride-rich lipoproteins; remnant cholesterol; residual cardiovascular risk